大阪大学などの研究グループによれば,神経細胞に特異的に発現する膜タンパク質、クラスター型プロトカドヘリン(Pcdh)のホモフィリック相互作用を神経細胞において可視化したとのことです(図1)。
図1. PcdhのγB2アイソフォームにCFP(水色)およびYFP(黄色)の蛍光タンパク質を融合したFRETプローブ。
画像引用元:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230922_1
これまでPcdhがホモフィリック相互作用することは株化培養細胞の凝集観察や,タンパク質の生物物理学的測定によって明らかになっていましたが,Pcdhが本来発現する神経細胞において、いつ・どこでホモフィリック相互作用をしているのか知る方法はありませんでした。
今回の研究では,FRETを利用したプローブを作製することで,Pcdhが相互作用している様子を神経細胞でリアルタイムに観察しました。これによりPcdhホモフィリック相互作用の動態を解明し,シナプスでは稀にしかPcdhがホモフィリック相互作用しないということを明らかにしました。
Pcdhは自閉症や統合失調症等の疾患に関連することが指摘されており,Pcdhホモフィリック相互作用の機能解明によりこれら疾患を理解することに繋がる可能性が開けました。
- 新規プローブの作製により、神経細胞でのPcdhホモフィリック相互作用の可視化に成功
- 神経細胞でのPcdhホモフィリック相互作用観察はシグナル/ノイズ比が低く困難であったが、1つのタンパク質分子に2種類の蛍光タンパク質を融合させた新たなコンセプトのFRETプローブにより解決
- 自閉症や統合失調症の理解促進に期待