【研究】社会行動の神経回路に関する総説論文を発表 -自閉スペクトラム症における異常-

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神戸大学や北海道大学などの研究グループは,社会行動の神経回路及び自閉スペクトラム症(自閉症)に見られるその異常に関する総説論文を発表しました。主な研究のポイントは以下の通りです。

  • 社会行動に関わる脳領域として、大脳皮質 (内側前頭前皮質、前帯状皮質、島皮質) 及び皮質下領域 (側座核、扁桃体基底外側核、腹側被蓋野) 、さらには神経修飾系 (オキシトシン、ドーパミン、セロトニン) の神経回路を概説しました。
  • 自閉症モデルマウスでは内側前頭前皮質―扁桃体基底外側核回路や神経修飾系回路に異常が見られます。
  • 今後直接記録またはバーチャルリアリティーを利用して、脳全体のネットワークやその動態を明らかにする技術が進歩することにより、社会行動やその異常としての自閉症における回路に基づく治療法開発への期待が高まります。

新型コロナウイルス・パンデミックを経験する中で、ヒトの社会行動に注目が集まっていますが、社会行動は複雑な行動です。齧歯類における社会行動を分類すると、相手を探知し、接近するか忌避するかを決定し、接近する場合、より調査をするといった一連の欲求期を経て、攻撃、交尾、育児などの完了行動による完了期に至ります。

画像:マウスの社会的相互作用
マウスの社会的相互作用
引用元:神戸大学

自閉症は未解明な部分の多い神経発達障害であり,特徴として社会性コミュニケーションの低下,特定の物事への強いこだわりや繰り返し行動を呈します。自閉症者は顕著な増加傾向にあり社会課題のひとつとして考えられています。上記でいうところの欲究期の異常が社会行動の異常として自閉症の特徴的行動です。

現在のところ社会性行動異常に対する適当な治療薬は存在せず,自閉症のみならず精神疾患一般が神経回路病と考えられることから,社会行動における神経回路の解明は将来の神経回路に基づく治療法開発につながります。

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