慶應義塾大学医学部 生理学教室の発表によれば,てんかんや自閉症を引き起こす原因のひとつと考えられるカイニン酸受容体がシナプスに組み込まれるメカニズムを解明したとのことです。
シナプス前部から分泌されたC1ql2とC1ql3はNeurexin3-C1ql2/3-カイニン酸受容体という三者複合体を形成して、神経ネットワーク活動の統合を制御する。
カイニン酸受容体やNeurexin3遺伝子の変異は一部の自閉症や知的障害患者においても報告されていることから,C1ql2とC1ql3によるシナプスへのカイニン酸受容体の動員と機能制御機構の解明はこれらの病態の究明にもつながる可能性があるそうです。また,C1ql2やC1ql3は分泌型タンパク質であることから,C1ql2やC1ql3とカイニン酸受容体との結合を直接に阻害できる可能性があり,てんかんや自閉症の新しい治療法の開発に繋がることも期待されているようです。
自閉症だけでなく知的障害についても言及があるのは意外とめずらしいので嬉しい限りです。
これまでもこのウェブログでは何度か自閉症の病態解明に繋がる研究について紹介しました(下記の関連記事参照)。去年くらいからいくつかそうした成果が出ているので,10年後,20年後には何らかの治療法が実用レベルに達してくれることを期待しています。息子が成人する前にそうしたものが実現されることを願いたいです。