【研究】自閉症小児が周囲の人を見ないことが、社会脳の発達を障害する可能性を示唆 ―早期行動療法の開発に有用か―

本サイトの記事には広告が含まれます。

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の研究によれば,自閉スペクトラム症(自閉症)モデルマーモセットが,子どもの時に大人のマーモセットを見ている時間と,成長後の自閉症様症状の間に強い相関があることを見いだしました。これは,幼少期にできるだけ周りの人を見るようにすることが,自閉症の早期治療の対象となる可能性を示すとともに,自閉症モデルマーモセットが自閉症治療法開発に有用であることも示しています。

小児期のマーモセットが3チャンバーテストで、透明な筒の中の大人のマーモセットを見る時間を測定しました。その結果、自閉症モデルマーモセットは 対照のマーモセットに比べて大人を見る時間(社会的注意)が半分以下に低下していることがわかりました。これは自閉症の小児において最初に気づかれる兆候をよく再現していると考えられます(下図)。

画像:視線が合わない
「視線が合わない」
引用元:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター

この自閉症モデルマーモセットが成長後,2つの高度な社会性試験を行なった結果,他者同士の交流の観察によって交流当事者の利己性を判断する能力に障害を来すことがわかりました。また,自閉症モデルマーモセットは,パートナーが自分よりもよい報酬をもらっていても自分のタスクをしっかり遂行することがわかりました。これらの自閉症モデルマーモセットの行動的特徴は自閉症で報告されている特徴とよく類似します。さらに自閉症モデルマーモセットの行動的特徴として,自閉症の方が時に示す高い記憶力,習慣へのこだわり・固執と類似の行動特徴と考えられるものも見られました。

本研究の結果は,自閉症小児の社会的注意の障害がその後の社会脳の発達を障害する可能性を示唆しています。同時に,自閉症の早期に周囲のヒトへ視線を向けるようにすることが,早期治療の対象となる可能性を示します。今後,自閉症モデルマーモセットを用いた早期治療介入法の開発が期待されます。

「トピックス」の人気記事

この記事も読まれています!