【研究】自閉スペクトラム症(ASD)とADHDの合併症の神経基盤 ~ASD/ADHD合併症は単純な重ね合わせではない~

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東京大学やカリフォルニア大学などの研究グループによれば,自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動症(ADHD)との合併症という近年ようやく認められるようになった疾患概念が,実はそれほど単純な合併症ではないということを神経科学的に明らかにしたとのことです。

  • 頻繁に報告される自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動症(ADHD)との合併症は、神経科学的には実は、ASDとADHDの重ね合わせではない可能性があることを明らかにしました。
  • 特にASD/ADHD合併症例のADHD様の行動は、純粋なADHDとは異なる神経メカニズムによって生まれている可能性が判明しました。
  • ASD/ADHD合併症の診断概念や薬物治療のアプローチを一部改良する必要があるかもしれません。

画像:自閉スペクトラム症(ASD)/ADHDの合併症はASDとADHDとを重ね合わせたものではなかった
画像引用元:東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)

ASDとADHDはともに人口の5%程度に認められる代表的な発達障害ですが,その症状は一見対照的です。ASDはコミュニケーションの困難さに加え,強いこだわりといった認知の硬直性を中核症状として認めますが,ADHDは集中できないといった認知の不安定性が症状の主体だからです。実際にかつては国際的診断基準もASDとADHDとは合併しないものとしてきました。しかしながら,臨床現場からASDとADHDそれぞれに類似した症状が同じ人に見られるという報告が相次いだため,最新版の診断基準ではASD/ADHD合併症という概念が認められるようになりました。

本研究ではASDとADHDとが一人の人の中で合併する神経メカニズムについて2種類のデータ駆動型解析を用いて調べました。その結果,ASDとADHDが合併しているとこれまで考えられてきた状態は,ASDとADHDとの単純な合併症ではないということが生物学的に初めて明らかになりました。特に合併症例で見られるADHDの様な症状は,純粋なADHDの症状とは異なる神経メカニズムによって生み出されていることが判明しました。

これらの成果は,ASD/ADHD合併症に対する概念や治療法の一部変更を促すものとなる可能性があります。特に合併症当事者のADHD様の症状を緩和する目的で,純粋なADHD当事者に対するものと同じ薬物を投与することの効果について再検討する必要性を示唆していると考えられます。

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