理化学研究所の研究グループによれば,脂肪細胞型脂肪酸結合タンパク質FABP4が自閉スペクトラム症(自閉症)のバイオマーカーになり得る可能性を発見したとのことです。
バイオマーカーとは,ある特定の病気の存在や病気の進行の程度を客観的に評価するために用いられる生体由来の指標のことで,自閉症の病態を明らかにし,新しい診断法や治療法の開発の取り組みに貢献するため,自閉症の生物学的再分類に役立つバイオマーカーの発見が望まれていました。
今回、共同研究グループは、定型発達児と自閉症児の血液サンプルを用いた解析により、低年齢の自閉症児では定型発達児と比較して血中のFABP4濃度が低いことを明らかにしました。また、自閉症のDNA検体を用いた遺伝子配列解析により、機能的変化につながるまれなFABP4遺伝子の変異を発見しました。さらに、Fabp4遺伝子破壊マウスは、自閉症類似の行動および組織学的特徴を示すことを明らかにしました。これらの結果から、FABP4が自閉症バイオマーカーになり得る可能性、FABP4の機能低下が自閉症の病態形成に関与する可能性が示されました。
これまでにも原因となる遺伝子の特定など研究記事を紹介してきましたが,こうした研究が近い将来,自閉症の病態解明や治療法の確立につながることを期待したいですね。