理化学研究所などの国際共同研究チームによれば,高機能自閉症スペクトラム(ASD)当事者の症状が,脳内の「感覚関連脳領域」や「尾状核」における局所的な神経情報処理特性と関連していることを発見したとのことです。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて「神経活動の時間スケール」をヒトの脳全体にわたって調べた結果,高機能ASD成人当事者の神経時間スケールは,一次体性感覚野や視覚野では定型発達者よりも短く,尾状核では長いことが分かりました。
これにより、感覚関連領域では入力情報に対して敏感である一方、認知機能と関係する尾状核では安定した情報統合が行なわれていると推測されます。さらに、この非定型的な神経時間スケールの傾向は、16歳以下の小児発達段階でも一貫していること、症状の重症度および解剖学的非定型性とも関係していることを明らかにしました。
本研究成果は,ASDの多様な症状の統一的理解の発展に貢献し,将来的にはASDの早期診断・早期介入の手がかりになると期待できるとのことです。
また,神経生物学的・臨床的発展のためにも,今回観察された局所的神経ダイナミクスが脳全体の神経ダイナミクスにどのように関連しているのか,そしてASDの他のサブグループ(言語機能の障がいを持つグループなど)や統合失調症といった精神神経疾患ではどうなのかなどを解明する必要があると考えられるとのことです。