【研究】自閉スペクトラム症には脳内のドーパミンD2/3受容体の減少が関連し、社会的コミュニケーションの困難さや脳部位間の機能的な結びつきに関与していることが明らかに

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日本医療研究開発機構と浜松医科大学の研究グループによれば,自閉スペクトラム症(ASD)と診断される人の多くで,脳内においてドーパミンD2/3受容体が減少しており,このことがASDの中核症状である社会的コミュニケーションの困難さやASDに特徴的とされる脳部位間の機能的な結びつきに関与することを見出したとのことです。

ASDは一般人口の54人に1人の割合で認められる頻度の高い発達障害です。その中心的な特徴として,他者と交流することが難しく社会生活に制約が生じるという社会的コミュニケーションの困難さ,そして興味が偏り同じ行動を繰り返しやすく変化に対して混乱しやすいという常同行動・限定的興味がみられますが,これらを起こす分子的なメカニズムは分かっていませんでした。

定型的な発達の方と比べてASDと診断された方では、ドーパミンD2/3受容体が元来豊富な脳領域全般にわたって、ドーパミンD2/3受容体の減少が認められました。特に、視床、前部帯状回、扁桃体では、減少の程度を表す効果量2)が比較的大きく、社会的な場面を好まない背景にこれらの脳領域の機能変化が認められることを根拠としてきたASDの「社会的動機付け仮説」に、ドーパミンD2/3受容体の減少という分子的なメカニズムを示しました。また、視床の亜区域の中でも視床枕(ししょうちん)に相当する視床後部領域で減少の効果量が最大でした。さらに、ASDの方では、この視床後部領域のドーパミンD2/3受容体の減少が社会的コミュニケーションの困難さと相関していました。視床枕は、物よりも人の顔に対して反射的に視線が向きやすいといった視覚的な社会的注意に関係すると考えられている脳領域です。
(中略)
脳内ドーパミンD2/3受容体の減少と脳の機能的な結びつきの強さとの相関が、ASDと定型的な発達の研究参加者で逆になっている神経経路が4つ見つかりました。この中には、社会行動を制御することで知られるいわゆる社会脳領域に含まれ視覚による社会情報を処理する上側頭溝と視床とのネットワークも含まれていました。この経路では、ASDに関連した機能的な結びつきの変化が既に報告されています。以上のように本研究によって、ASDに関連した社会脳ネットワークの変化には、ドーパミンD2/3受容体の減少が関係していることが示されました。

今回の研究成果から,脳内でドーパミンD2/3受容体を調整する薬によって,社会的コミュニケーションの困難さを改善する新しい治療法の開発につながることが期待されます。

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