理化学研究所の研究グループによれば,胞内のタンパク質分解に関わる「オートファジー機能」の欠損によるタンパク質恒常性の低下が,自閉症様の行動を誘導することを発見したとのことです。
今回、研究グループは、マウス脳の興奮性神経細胞または抑制性神経細胞において、オートファジー機能に関わる遺伝子を欠損させたところ、欠損マウスが社会性の欠如などの自閉症様の行動を示すことを見いだしました。また、新たに開発したプロテオミクス手法を用いて、オートファジー機能欠損によって蓄積したタンパク質p62と、抑制性の神経伝達物質GABAの受容体に関連するGABARAPタンパク質群が共凝集していることを発見しました。さらに、この共凝集によりGABA受容体の量が減ることで、神経細胞の興奮性と抑制性のバランスが低下すること、この機能不全がより一般的にp62の凝集体形成を通じて生じることが分かりました。したがって、GABARAPタンパク質の凝集化を阻害することは、発達障害などを緩和させる有効な手段であると考えられます。
本研究成果は,自閉症などの発達障害や精神疾患の克服に向けた新たな治療戦略の開発への貢献を期待できるとのことです。