【研究】脳体積による精神疾患の新たな分類を提案 ~ 認知・社会機能と関連、精神疾患の新規診断法開発への発展に期待 ~

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国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)や東京大学などの研究グループにより,脳体積による精神疾患の新たな分類が提案されました。

精神科の臨床現場では鑑別診断が困難であることあり,これは患者・当事者本人の主観的な訴えとしての症状や徴候に基づく診断基準を利用していることと関連しています。こうした背景から客観的なバイオマーカーを利用した新たな診断基準の創出が期待されています。

これまでの脳神経画像研究やその他の研究から大脳皮質下領域構造がさまざまな心理行動学的機能において中心的な役割を果たしていることがわかっていましたが,現行の診断基準の限界点を乗り越えるような認知・社会機能を反映するような脳神経画像データ駆動型の臨床的診断基準はこれまでにありませんでした。

(前略)日本全国の14の研究機関において、4大精神疾患(統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害、自閉スペクトラム症)の患者・当事者と健常者の計5604名(統合失調症 1500名、双極性障害 235名、大うつ病性障害 598名、自閉スペクトラム症 193名、健常者 3078名)よりMRI脳構造画像データを収集し、大脳皮質下領域構造についての大規模解析を行いました。まず、各疾患における大脳皮質下領域構造の体積の特徴を調べました。健常者と比較して、統合失調症、双極性障害、大うつ病性障害において側脳室の体積が大きく、統合失調症、双極性障害において海馬の体積が小さく、さらには統合失調症において、扁桃体、視床、側坐核の体積が小さく、尾状核、被殻、淡蒼球の体積が大きいことを見出しました(図1)。これらの結果は、米国のEnhancing Neuroimaging Genetics through Meta‒Analysis(ENIGMA)コンソーシアムより報告されていた多施設大規模研究の結果を概ね再現しました。次に、計5604名について大脳皮質下領域構造の体積によるクラスタリング解析を実施し、4つの類型(脳バイオタイプ)に分類されることを見出しました。

画像:【図1】4大精神疾患における大脳皮質下領域構造の体積
【図1】4大精神疾患における大脳皮質下領域構造の体積
画像引用元:国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

本研究の成果は,近年進みつつある従来の精神疾患の診断基準の見直しに一石を投じ,生物学的データ駆動型の新たな精神科診断基準の創出につながる可能性があります。こうした取り組みは精神科の臨床現場において,患者・当事者の方々の予後予測や治療法選択に役立つものと期待されます。

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