【研究】自閉スペクトラム症を持つ児童の治療や教育への活用に向けた第一歩 共同注意と言語能力の関係を解析

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金沢大学などの研究グループによれば,3~8歳の知的能力に重度の遅れのない,自閉スペクトラム症(ASD)を持つ児童において,共同注意というコミュニケーション能力の異常が大きいほど,言語能力のひとつである概念類推の能力が低くなることを明らかにしたとのことです。

共同注意とは,ヒトにおいて生後半年からみられる,他者とコミュニケーションするための能力のひとつです。子どもが自分の気になるものを指さして,お母さんにも見てもらおうとするなどの行動で表わされます(下図)。自閉スペクトラム症を持つ児童においては,こうした行動の出現する年齢が遅かったり,出現する頻度が低いなどの異常がみられます。

画像:共同注意の一例
引用元:金沢大学
共同注意の一例

また,概念類推の能力とは,物の特徴や機能などの言葉のヒントから,それが何を意味しているのかを類推する能力のことで,例えば「傘があって,球があって,暗い部屋に灯りを灯すものは何でしょう」という問いなどで評価されます。

これまで主に3歳以下の自閉スペクトラム症児において共同注意の異常と言語の理解,表出の能力に関連があることは過去の研究で示されていましたが,3歳を超える自閉スペクトラム症児についてこうした研究は行われておらず,また,理解,表出以外の言語能力に共同注意との関連があるかは不明でした。本研究では,知的能力に重度の障害を持たない3歳以上の自閉スペクトラム症児を対象に,解析を行いました。その結果,これらの児童において,共同注意と言語の概念類推能力の間に統計学的に有意な相関がみられました。

これらの知見は将来,自閉スペクトラム症を持つ児童の言語能力を高め,学校や社会への適応能力を改善するための治療や教育に活用されることが期待されます。

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