東北大学らの研究グループによれば,父親の加齢が仔(子ども)の神経発達障害様行動異常の原因となりうること,また,その原因となる分子基盤の一部を明らかにしたとのことです。
精神遅滞や自閉スペクトラム症など,子どもの神経発達障害は増加の一途をたどっており,少子高齢化が進行する社会で大きな問題となっています。疫学的調査より子どもの発達障害が生じるリスクには,母親よりも父親の年齢の方が大きく関与することが知られていましたが,そのメカニズムは不明でした。
【研究のポイント】
- マウスにおいて父親の加齢によって生じる精子の非遺伝的変化(DNAメチル化注1の低下)を同定した
- 加齢父マウス由来仔マウスの脳で働く遺伝子の網羅的解析により、脳の発生プログラムの異常を明らかにした
- 加齢精子におけるDNA低メチル化領域と胎仔脳で発現が上昇している遺伝子群に共通して、REST/NRSFタンパク質が関与している可能性を見出した
本研究は,父親の加齢による次世代個体の神経発生への影響を遺伝子レベルで解明した初めての報告であり,本研究により神経発達障害の新たな分子病態基盤の解明に貢献することが期待されます。
晩婚化や少子高齢化はますます進むでしょうから,根本的な治療法などが確立されない限り今後も避けられない要因でしょうねぇ。