名古屋大学の研究グループによれば,自閉スペクトラム症(ASD)や統合失調症の発症に関わる可能性のある脳領域間の関係性(脳内ネットワーク)を推定する人工知能(AI)手法を開発したとのことです。
ASDや統合失調症に代表される精神障害は,ゲノムと環境の複合的要因による脳機能障害を原因とする疾患であり,その基盤となる分子,細胞,回路レベルにおけるメカニズムは未だ十分に解明されていません。こうしたメカニズムを解明するには,疾患に関わる脳領域間の関係性を詳しく調べることが重要であり,本研究では開発した機械学習の手法を疾患に関わる遺伝子群と脳領域ごとの遺伝子ネットワークに適用することにより,ASDや統合失調症に関わるゲノム変異の影響が脳の各領域へどのように伝播し,疾患に関わるネットワークを形成しているのかについて調べました。
ポイント
- 精神疾患の発症に関わるゲノム変異の影響が脳内でどのように伝播されていくかを解析するAI手法を開発
- 自閉スペクトラム症や統合失調症の発症に関わる脳内ネットワークの推定が可能となった
- 個別化医療に向けて、個々のゲノム情報に基づく診断法や治療法の開発の基盤として期待
因みに,人工知能を用いた研究はこれまでにも以下のようなものを紹介していますね。
【研究】ADHDの脳構造の特徴を人工知能により解明し、遺伝子多型の影響を発見 【研究】自閉症を脳回路から見分ける先端人工知能技術を開発