これまで数多くの研究記事を紹介してきましたが,いずれも「今後の治療法や創薬に期待」というものでした。
今回の研究成果は違います。東京薬科大学によれば,マウスでついに自閉症の根本治療に成功したそうです。ヒト(特に胎児でない)への応用という点ではまだまだこれからでしょうが,他大学の研究も含め,今後,自閉症治療については大きな前進が期待されます。
さらに、胎生期にHDAC6特異的阻害剤であるTubastatinAを投与すると、神経細胞の移動は正常に戻り、自閉症様行動も劇的に回復しました。これはマウスを用いた世界初の自閉症様行動の根本治療の成功例であり、次世代の治療戦略の方向性を示す画期的な研究成果です。
模式図によれば,CAMDI遺伝子の欠損によりHDAC6の活性が異常に亢進し,胎生期に起こる大脳皮質の神経細胞の移動が遅れるそうです。その結果,多動,繰り返し行動,新規環境への適用不全,社会性の低下など,自閉症で認められる行動を示すようになります。しかしながら,胎生期にHDAC6の特異的阻害剤を投与することで,神経細胞の移動異常が改善され,また,自閉症様行動が回復することが確認されたそうです。