【研究】ヒストンメチル化による自閉症の新しいメカニズムを発見 ―自閉スペクトラム症の治療薬開発に役立つ可能性―

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理化学研究所などの研究グループによれば,自閉スペクトラム症でヒストンH3のメチル化に関連する「SUV39H2遺伝子」に機能喪失を来すアミノ酸変異を見いだし,ヒストンメチル化の異常が自閉症に関連するメカニズムを発見したとのことです。

自閉症の詳しい原因は不明な点が多く、今のところ病因に基づいた有効な治療薬はありません。今回、国際共同研究グループは、健常対照者と自閉症のDNA検体を用いた遺伝子配列解析により、機能喪失につながるまれなSUV39H2遺伝子のアミノ酸変異を発見しました。さらに、SUV39H2遺伝子破壊マウスは、自閉症の中核症状である「同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり」に相当する行動を示しました。また、ヒストンH3のメチル化障害は「クラスター型プロトカドヘリンβ遺伝子群」の発現の乱れを生じさせたことから、脳発達期のヒストンH3のメチル化不全が、プロトカドヘリンを介した神経ネットワークの形成に影響を与え、自閉症につながるという新しいメカニズムを明らかにしました。

今回,研究グループは自閉症の原因として,(1)SUV39H2遺伝子の機能喪失,(2)プロトカドヘリンβ遺伝子群のプロモーター領域のH3K9のメチル化の減少,(3)プロトカドヘリンβ遺伝子群の発現上昇,結果として(4)神経ネットワーク形成の乱れにつながる可能性,を明らかにしました。

また,SUV39H2遺伝子の異常は,自閉症の症状のうち「同一性への固執,習慣へのかたくななこだわり」に関係することが判明したのはとても興味深いですね。

現状において自閉症は原因に基づいた治療法がありませんので,こうした研究の積み重ねが治療法などに繋がることを期待したいです。

2021年中の発達障害・自閉症・知的障害に関連する研究トピックはほかにもたくさんあるのですが,なかなか忙しくて紹介しきれません。

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