ニュース記事を見て知った程度なので詳しい事情は分かりませんが,乙武氏の騒動(不倫だなんだという騒動)を聞いて感じたことなど。
実は私は大学の入退学を何度も繰り返しており,最初に入学したのは早稲田大学でした。高校生の頃からフリーランスとして仕事をしていたため,大学にはほとんど行っていなかったのですが,当時親しかったA君がよく「乙武君」の話をしていたのを思い出しました。
もう20年近く前の話なので記憶もおぼろげですが,A君(現在は大企業でかなり出世しているようです)は確かゼミか何かで乙武氏と一緒でかなり仲良くしていたそうで,何度か「紹介してあげる」というようなことを言われたような気がします(おそらく乙武氏とA君・私は同学年)。そんなこともあって,セミナーのようなものだったのか単なる飲み会だったのかは憶えていませんが,何かの集まりで1回か2回,乙武氏と一緒になる機会がありました。ただ,当時の私は早稲田大学を退学しようかどうかというところで(確かすでに慶應義塾大学へ行くことが決定していた),早稲田大学での活動にはほとんど興味がなく,挨拶した程度でさほど会話はしなかったように記憶しています。今思えばもうちょっと会話しておいても良かったかな,と後悔もしています。
前置きはそれくらいにして,乙武氏の騒動を見て痛烈に感じたのは,知的障害か身体障害かで生き方が大きく変わるだろう,ということです。乙武氏が身体障害者の中でも希有な存在であるということは重々承知していますが,それでも彼があそこまでの地位に上り詰めたのは知的障害ではなく身体障害だったことが大きいように思います。度合いにもよりますが知的障害であればきっと大学へ行くこともなかったでしょうし,言論を武器にすることもできなかったはずです。著書も推薦図書になっていたはずなので収入面では一生安泰でしょうし(今回の一件で取り消しなどなければ),一般的なサラリーマンの何倍もの収入を得,結婚し,子宝にも恵まれ,そして不倫も,というのはやはり知的障害ではなく,むしろ平均以上に学力があったからなし得たのだと感じました。
不倫については,お金があったからできたことなのかもしれないですし,乙武氏自身に魅力があったからなのかもしれませんし,あるいは一般的に想起される「不倫」というよりも「介護」の意味合いが強かったのかもしれませんし,当事者ではないので事情は分かりません。ただA君があれだけ心酔(?)していたことを考えると,乙武氏と深く話せば人によっては大きく共感し,魅了されるのかもしれません。そうしたインテリジェンスに富んだ(?)トーク力などを身に付けることも知的障害では難しいものです。
もちろん乙武氏のあのバイタリティというのは誰にでもあるものではないです。物事や世界を認識できてしまうため,知的障害のない身体障害の人が思い悩んだり,絶望したりということもきっとあるでしょう。知的障害と身体障害に優劣があるわけでもないですし,息子は身体については軽度なので,その両方を持っている人がたくさんいることも承知しています。
ただ今回の騒動で遠い過去の乙武氏との接点を思い出し,ふと,もし息子が知的障害ではなく身体障害だったらどうだったのだろうか,と不毛だとは思いつつも考えてしまいました。きっと3歳の今ならそれなりに会話もできたでしょう。私が主に自宅で本を書いたり,音楽を作ったり,プログラミングをしたり,デザインをしたり,といった仕事をしているので,将来的に就職は難しくてもそうした仕事の手伝いをできたかもしれません。あるいは私以上に才能を発揮することもあったかもしれません。あくまでも生き方の可能性という点では多少なりとも広がりがあったように感じました。
現実に話を戻すと,息子がこの先どのくらい改善が見込めるかはおそらく誰にも分かりませんが,あまり改善がなかった場合は,将来的に,例えば親がいなくなったり年老いてしまったら,しかるべき施設での生活なども視野に入れなければならないかもしれません。また,親(185cm, 168cm)に似たのか息子は体格がよく,この先,息子を制止できるのか,という不安もあります。息子は成長して大きくなっていきますが,親はこれから体力も筋力も衰えるばかりです。例えば,外出時に道路など危険な場所に飛び出してしまったり,あるいは不満なときに叩いたりしてくるのを果たして止めることができるだろうか,そういったことも頭を過ります。もちろん「危険なほうへは行かない」「不満があったら言葉や身振り手振りで伝える」といったことが身に付いてくれることが一番ですが,今の段階ではまだ分かりません。
乙武氏の一件でいろいろと思い出したり考えたりすることはありましたが,少し前に比べて「成長している!」と実感できることも多く,やはりたくさんの笑顔を見たいですので,親としてはこれまで以上に愛情を持って接し,また試行錯誤を重ね,加えて社会の協力も得,頑張っていこうと再認識できたのではないかと思います。
ところで,不倫(不貞)については刑法上の罪ではないので罰則もなければ逮捕されることもないですし,あくまで当事者間の問題(民法上の問題)なので,倫理観が求められる職業の場合は倫理上の問題はあるにせよ,著名人だからといってまったく関係のない他者がいちいち叩くべきものではないと個人的には思っています。荒んだ現代社会では誰かを叩きたいという大衆の衝動が大きいのか,わりと騒動になったりしているそうで,その清廉潔白なイメージで売っていた人の場合はとりわけ「騙された」という感覚が大きくなるのかもしれませんね。
以上,まとまりに欠ける話でしたが,ふと思ったことでした。
個人的には最初の大学入学の頃(つまり18歳頃)なんてつい最近のように感じているのですが,すでに20年が経過,すなわち大学入学までの人生よりもその後の人生のほうが長いことに驚かされます。